ベトナム、ミャンマー、ネパール人コミュニティへの新型コロナウイルス情報普及活動の経験

外国人に情報を届けよう

2020年12月から2021年6月にかけて、MINNA ヘルスプロジェクトで実施した、在住外国人に向けた情報普及活動の要点をまとめます。

 

外国人に向けた情報発信は、本人たちに届いている?

関係者からの聞き取り調査で以下のことが分かりました。

  • 外国人(ベトナム・ミャンマー・ネパール)コミュニティは一枚岩ではなく、多くの「サブコミュニティ」(留学生、技能実習生、コックさんなど)からなっている。
  • 政府・自治体など公的機関は、新型コロナウイルスに関して、多言語での情報発信をしているが、外国人はこれらにほとんどアクセスしていない。文章を読むのが苦手とする人も多い。

そこで、キーパーソンを通じて、親しみやすい形で、情報発信をすればよいのではと、仮説を立てました。

 

キーパーソンにアニメ動画の発信を依頼してみたが・・・

会食の機会が増えるクリスマスに向けて、下のような3つのアニメーション動画を制作しました。

この3つの動画を日本語、英語、ネパール語、ベトナム語、ミャンマー語の5言語に翻訳しました。(これらのアニメーション啓発動画は、https://www.youtube.com/channel/UCwl5-xxuzY7lIYnpYSloYLwから、ご覧になれます)

2020年12月24日と25日に、5言語に翻訳した全ての動画をYouTubeにアップロードしました。そして、そのリンクをネパール、ベトナム、ミャンマーの支援団体や関連する研究者などのキーパーソンおよび外国人相談関連のネットワークに共有し、拡散を依頼しました。

しかし、YouTube動画の視聴回数は、いずれも300回未満で、想定していたよりも少なく、非常にショックを受けました。

そこで、作成側の関係者間で振り返りをしたところ、以下のような意見が出ました。

  • アニメ動画を視聴するためには、YouTubeへの移動が必要で、操作が面倒だった。
  • コミュニティのキーパーソンに情報発信を依頼したが、十分に拡散してもらえなかった。それはキーパーソンとの事前の関係づくりが十分でなかったからではないか。
  • 情報発信が一方的で、当事者の巻き込みがなかった。

当初は、「私達が良いものを作って発信すれば、対象者に届く」と考えていたのですが、発信方法の再検討を迫られたのでした!

 

100万人に届け! Facebookにアニメ動画を投稿してみたが・・・

外国人コミュニティのFacebookの状況を詳しく調べてみたところ、以下のように数十万人規模のページやグループが存在することがわかりました。そこで今度は、キーパーソンに加え、このようなFacebookに動画を直接投稿することで、より多くの人に情報を届けることができるのではと考えました。

ちょうど、ベトナム旧正月(テト)が目前に迫っていたので、テトに向けた予防啓発情報の発信を試みることにしました。

↑動画「パーティーでの新型コロナウイルス感染を防ぐために」

発信用のFacebookアカウントを取得し、上のような動画を作成しました。動画のサムネイル画像はテトを意識したイラストにしました。

8つのFacebookグループに動画の投稿を試みたところ、5つからは承認されず(A)、1つは動画が削除(B)、2つのグループに投稿できました(C)が、視聴されたのはわずか80回でした!

続いて、上記のFacebookグループ以外にキーパーソン等を通じて、動画の発信を依頼したところ、総視聴回数は870回となりました。

Facebookに投稿さえすれば順調に拡散されると信じていたのですが、現実は厳しく、さらに大きなショックを受けたのでした・・・。

 

最大手Facebookページを通じて10万人近くにリーチ!

キーパーソンおよびFacebookを通じた発信は、我々の思うように進みませんでした。そこで、多くの人に見てもらえるような投稿の仕方を教えてもらうため、Facebook管理者に片っ端から連絡しましたが、残念ながら返事はいただけませんでした。

しかし、ある日、一つのFacebookから返事がありました。しかも、それはフォロワー数80万人を超える、ベトナム最大手のページだったのです。管理者と相談し、そのFacebookページに投稿することで発信を試みたところ、投稿5日後で9万2千回の視聴、2000件の「いいね!」を獲得することができました。

(引用:https://www.facebook.com/TAIHENDoiSong/

 

そして今 挑戦はまだ続く

一方、クリスマスの時に発信したYouTube動画の視聴回数を、数か月ぶりに確認したところ、日本語とベトナム語の動画3つが2000~8000回に伸びていました。視聴回数の増加は、2021年4月から5月にかけて見られ、3回目の緊急事態宣言と時期が重なっておりました。

動画への流入は、

  • ブラウジング機能(YouTubeのトップッページを開いたときに表示される)約60%、
  • YouTube検索(検索ボックスにキーワードを入力して、検索)が約25%、
  • 関連動画(別の動画を再生しているときに、表示される関連動画)が約10%
    あることがわかりました。

YouTubeでの検索では、「コロナウイルス 感染しました」「濃厚接触者」「コロナ 濃厚接触者」などの単語で検索されていることがわかりました。関連動画での流入は、テレビ東京の「感染したらこうなった!~新型コロナ感染体験から後遺症まで【解説】します~」といった動画からオススメ表示されているようでした。4月後半に動画が急に視聴された要因は、視聴者がコロナ関連の情報を探し、本動画が視聴されたことをきっかけに、YouTubeにより重要な動画と認識され、ブラウジング機能で表示されるようになったと考えられます。ブラウジング機能を活用する方法として、様々な攻略法が言われているが、我々のケースに当てはまる可能性があるのは、「いいものを作る」ということでした。

 

まとめ

一連の活動で学んだまとめです。

  • 必ずしも「良いものを作って発信すれば、対象者に届く」というわけではなく、丁寧な準備とが必要。
  • Facebookは有力なプラットフォームだが、それを有効に活用することは簡単ではない。
  • 外国人コミュニティに属していて、は大きな可能性がある。こうした人たちに丁寧にアプローチし、地道に関係を築いていくことが重要ではないかと、我々は考えている。
  • 「いいものを作る(親しみやすい言葉で正確な情報を流す)」ということを基本に据えつつ、一般に言われているYouTubeブラウジング機能攻略方法を検討していく。

ありがとうございました。

※この記事は、2021年6月28日時点での最新情報です。今後、活動が進捗すれば、適宜記事を更新していく場合がございます。

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