a)『外国人労働者をどう受け入れるべきか:安い労働力から戦力へ』NHK出版新書 2017
b)『データでよみとく 外国人依存日本』 光文社新書 2019
2016年に日本で働く外国人の数が初めて100万人を超えた。一人一人の日本人の「肌感覚」は、どこに住んでいるか(大都市圏、工業地帯、農村地帯など)、どのような仕事に従事しているか(オフィスワーク、建設現場、学校、流通業など)でずいぶん違うが、職場に外国人がいなくてもコンビニや居酒屋の店員としてアジア出身者が増えてきたことを実感し始めたのが2017年頃と言ってよいのではないだろうか。これを受けてNHKは2017年から在日外国人問題に関する特集取材を開始し、「肌感覚」の背景にある変化を描き出したのがこの二冊である。問題意識は共通しており、日本は移民政策を取っていない「はず」なのに、なぜ外国人が増え、今後どうなるのか?である。
取材開始後まもなく出版されたa)では、第一章で在日外国人労働者の労働環境が「奴隷労働」と称されても仕方のない側面があることをいくつかの事例で示し、第二章でそのような状況でもなぜ外国人が働き続けなければならないのか、特に技能実習生を送り出すメカニズムが内包する矛盾を示す。そして第三章で、今後増えていくであろう様々なステイタスの外国人を単なる「労働力」でなく、社会の一員として受け入れるための方策を示す。
取材を積み重ねて、データも集積されたことを踏まえて出版されたb)では、第一章で都道府県別のデータなども提示しながら、日本の労働力は外国人への「依存」なしには立ち行かなくなっている事実を突き付ける。外国人の増加率が急増しているのは北海道と九州・沖縄・四国地方であり、市町村単位での外国人増加率をとってもこれら地域の市町村が多いことがわかる。これは、農業・水産業の高齢化・人手不足に対応した「技能実習生」の増加と呼応している。産業別外国人依存率(p.27)は、2015年国勢調査データで農業が14人に1(茨城県に限れば3人に1人:p.30)、漁業が16人に1人(広島県に限れば2人に1人:p.46)、製造業が21人に1人となっていた。この割合はその後も確実に増えているし、その後の「インバウンド」ブームでサービス業でも割合は増えているだろう。絶対数では、製造業が26万人と突出しており、縫製業などで過酷な労働条件下にある外国人も多い。
第二章では、都内の外国人新成人の増加を取り上げ、2019年の新成人に占める外国人の割合が新宿区で45.2%、豊島区で39%という数字が示される(p.71)。外国人集住地域の各国別コミュニティの隆盛や、ネパール人学校(杉並のエベレスト・インタナショナルスクール)などの事例から、外国人が生活者、消費者として定着していく方向性が示唆される。
第三章では、外国人労働力に付随して増加する「日本語を母語としない子供たち」とそれを受け入れる市町村の苦悩が記される。こうした子供たちを「例外」として放置することが出来る段階はとうに過ぎている。言い古されているフレーズだが、「労働力を招いたが、やってきたのは人間だった」という事実から、我々はもう逃げられないのである。(了)
佐藤寛(アジア経済研究所)
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