2025年2月16日(日)に地域の国際化ネットワーク形成事業 第3回高知大学「地域×国際」セミナー「まぜこじゃKOCHI~土佐と世界をいっちきちもんちきち※~」が開催されました。MINNAのメンバーであり、開発社会学舎を主宰する佐藤寛さんが基調講演を行いました。セミナーでは、高知大学学生によるインドネシアの民族楽器ガムラン演奏パフォーマンス、地域の国際化の様々なテーマに分かれての分科会、そして最後に国際協力機構(JICA)理事長の田中明彦氏の基調講演が行われました。(詳細は下記のポスター参照)
※「いっちきちもんちきち」は、「行ってきて戻ってきた」という高知の宿毛の方言です。

出典:https://www.kochi-u.ac.jp/events/2025011000021/
セミナーの目的
人口減少・少子高齢化が急速に進行している高知県の課題解決のため、県内外で活躍する国際協力・交流の実践者、産業・地域づくりの実践者、大学、行政や在住外国人が「まぜこじゃ」になって連携し、横断的なネットワークを形成することを目的としています。また、様々な取り組み事例を通して「グローバルの中のローカル、ローカルの中のグローバル」という視点を再考することで、ローカルとグローバルが統合した、持続可能な地域社会の実現に資することを目的にしています。
なぜ高知で?
高知県は、人口減少や少子高齢化に関連する課題を抱える一方で、全国的には約1%と在住外国人人口の割合は低いものの、近年、技能実習や特定技能による外国人人材の流入が増加しています。さらに、国際協力等の経験を持つグローバル人材が、高知県に移住し、国際経験を活かした新たな地域づくりを行っている事例が各地で見られるようになりました。しかしながら、これまでは国際や在住外国人、地域づくりは別々のものとして捉えられることが多くみられました。在住外国人の割合が1%の今だからこそ、国際と地域をひとつのものとして捉え、融合させることによって、新たな地域課題解決や相互発展のアプローチについて考えていく必要があると考えられています。また、2024年9月には、JICA四国、本山町、高知大学次世代地域創造センター(本セミナーの主催)との連携覚書が締結されました。JICA四国が域内の市町村と覚書等を締結するのは今回が初めてとのことです。こうした背景から、高知県では国際的視点をもった地域活性化の取り組みをさらに推進することが期待されています。
参考:

外国人人口1%から始める私たちのマインドチェンジ~多文化ポジティブな社会を目指して~
セミナーは、MINNAメンバーの佐藤寛氏の基調講演から開始されました。日本の外国人労働者受け入れの歴史、日本もかつては移民を送り出していた歴史にも触れられました。日本人人口が充足していた高度経済成長の時代とは異なり、少子・高齢化の現代の日本においては、外国人労働者は不可欠な時代となっており、日本の労働者人口の3.4%を占めています。今までは、外国人が働く様子は見えにくい面もありましたが、今後はどんどん見えるところで働く時代になっていくことが予想されるとのことです。外国人が日本で暮らす際には、生活上の課題や健康の不安、言語の問題等があり、受け入れる側の日本の政策や対応が重要になります。全国の外国人人口の割合は2.4%、高知は約1%とまだ低いですが、今のうちに外国人を受け入れる体制、そして何よりひとりひとりが多文化共生に向けてマインドチェンジを図っていくことの重要性が強調されていました。

佐藤寛氏の基調講演にて。質疑も活発に行われました。
ガムラン演奏パフォーマンス
高知大学学生によるインドネシアの民族音楽ガムラン(旋律打楽器の合奏)の演奏パフォーマンスがお昼休憩の前に行われました。高知大学には、ガムランを学べる授業があるそうで、履修している学生の方々が演奏くださいました。なかなか見ることのない楽器に、観客のみなさんは興味津々でした。優雅な音色を楽しむ素敵なひと時となりました。

インドネシア民族音楽ガムランに使用される楽器
分科会や交流を通しての気づき
午後には、6つの分科会が開催され、地域おこし協力隊、行政、国際交流協会、大学、企業等、様々な分野の方が登壇されました。登壇者に限らず、参加者とも活発な交流を行う場となりました。
1.日本語教育と地域コミュニティ、方言への対応
日本語教室を拠点とした地域コミュニティづくりについて、高知県の日高村と広島県の江田島市の事例が報告されました。日高村では、地域住民と外国人住民との交流ができるように日本語教育を公共施設で行ったり、地域住民が困っている外国人住民の生活支援を行ったり、日本語教室の枠を超えた取り組みが行われていました。江田島市では「いつでも、だれでも」参加できる場所であることを大切にしており、様々な国籍の人々との交流や日本文化を知る機会を設けています。また、連続講座ではなく、当日参加者の希望することを実施する等、様々な工夫がなされていました。また、会場には高知県内の日本語教育に携わっている方も多く参加しており、日本語教育の実際について個別にお話を伺う機会もありました。地方においては、共通語だけでなく方言も理解できるように、方言を意識した日本語教育が重要と話されていた点が印象的でした。高知県では、高知県国際交流協会が「土佐弁講座」のYouTube動画を作成したり、高知県が土佐弁も含む「高知県版日本語学習支援活動集」を作成したりする等、土佐弁も理解できるような日本語教育に取り組まれているとのことでした。
参考:https://www.youtube.com/@-kia-7468/videos

土佐弁講座についての高知県国際交流協会のチラシ
2.国際協力NGOが佐賀県で地域活性化に取り組む
CSO(Civil Society Organizations:市民社会組織)誘致事業というユニークな取り組みを行う佐賀県から、事業報告がありました。CSOには、特定非営利活動法人(NPO)、非政府組織(NGO)市民活動・ボランティア団体に限らず、自治会・町内会、婦人会、老人会、PTAといった組織・団体を含めているとのことです。佐賀県では、平成27年度からこの事業に取り組んでいます。県外で活躍するCSOを誘致することで、人材の流入や雇用の創出を図るとともに、県内CSOが誘致されたCSOからノウハウの提供や交流を通じて学び、地域の課題解決につなげることを目指しています。これまでに、16団体が誘致され、分野としては、災害支援・備蓄、防災教育や国際理解教室、伝統工芸の支援、貧困者への食糧支援等、NGOのノウハウを生かした多岐に渡る事業が展開されています。誘致CSOは、企業型ふるさと納税や協働創出事業を行えるという利点があるとのことです。
参考:https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00346571/index.html
共創と環流
最後に行われたJICA理事長の田中氏による基調講演でのテーマ「共創と環流」は2023年の開発協力大綱の改定後から使用されている概念で、途上国との対話と協働を通じた社会的価値の「共創」と、その価値を日本の社会にも「環流」して日本の成長にもつなげることを意味しています。特に、「環流」においては、国際協力の経験が日本の問題解決にもつながり、もちろんその反対もあるため、めぐっているという意味もあるとのことでした。
参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/100514694.pdf
基調講演の中では、JICA海外協力隊OBの地域での活躍、JICA協力隊に行く前に地域で活動するグローカルプログラム等の具体的事例が紹介されました。冒頭で記載した、高知大学、本山町、JICAとの連携協定に基づく地域活性化に向けた活動への期待も述べられました。また、今後の日本に不可欠な外国人材との多文化共生の重要性についても触れられました。
おわりに
「グローバルな経験をローカルに活用する」というテーマは今回のセミナーで繰り返し取り上げられ、様々な好事例の共有や意見交換が行われました。セミナー関係者も、参加者もとてもエネルギーに溢れており、グローバル人材がローカルで活躍することで、多文化理解が促進され、多文化ポジティブな社会の実現につながっていくのだろうと希望が持てるセミナーでした。
余談:人としてのつながり
ご縁があって、今回の高知訪問の際に、筆者はミャンマー人の方の結婚パーティーに同席させていただきました。民族衣装に身を包み、ミャンマーの料理と歌でお祝いをする、とても素敵なパーティーでした。また、ミャンマー人の方々の同僚の日本人の方々もお祝いに駆けつけており、親しそうに話をされている様子や、土佐弁交じりの日本語で会話をする様子を見て、お互いを尊重しながら良好な関係性を築いていることが垣間見えて、とても温かな気持ちになりました。こうした人としてのつながりが、多文化共生を進めていくのだなと改めて実感しました。

とても美味しかったミャンマー料理
文責:髙野友花
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